【太宰府市・楠田市長インタビュー】
〝移住地太宰府〟の魅力を発見し、行政に提案する
執筆・中尾 綾乃
太宰府市長にインタビューできる―。この貴重な機会を与えられた私は市長に何をインタビューしたらよいものかと頭を悩ませた。太宰府の魅力を伝える記事、観光地としてのアピールをする記事、太宰府市の行政に関する記事など、どれもピンと来なかった。悩んだ末、「せっかくの機会なので私が聞きたいことを取材させてもらおう」と思った。その内容は誰もが思いつく「観光地としての太宰府」ではなく、近年需要が高まる「移住地としての太宰府」としての視点で、太宰府にはどんな魅力があるのかを取材した。
実際に暮らしていて「住みにくさ」を感じたことはない。福岡市へのアクセスも便利で、太宰府の歴史を感じながらも、暮らしやすい。また、太宰府天満宮付近を散歩すれば、地元の方に声をかけてもらえたり、人の温かさも感じることができ、市の人口も増加している。
しかし、移住地としての「何か特別な魅力は」と聞かれると、言葉に詰まる。でも、私が知らない魅力や取り組みがあるのかもしれない。もし、ないとしても、それはそれで一緒に考えていきたい。そんな思いで楠田市長を訪ねた。
結果、期待した「特別な魅力」を教えていただけたかというと、予想した通りの回答をいただいた。やるべきことが山のようにある市役所にとって移住定住政策は優先順位が高くなく、できることにも限界があると改めて感じた。
私は質疑の中で「私たちが一緒に考えたい」と提案すると、「もちろん。どんどん提案を出して」と市長は理解を示してくれた。「まちの行く末を一緒に考えられる」「遠慮なく提案をさせてもらえる」-。
太宰府に住む大学生にとって、こんなにいい経験ができる機会なんてめったにないと思いました。それと同時に、日本経済大学としても共同プロジェクトやタイアップができると確信した。私の記事を読んだ誰かが「いいじゃん、やろうよそれ。」と思ってくれるように。
太宰府の古き良き魅力を残した古民家リノベーションや『MUJI HOUSE』のような若者が住んでみたくなる住宅整備など、その場での私の思いつきの企画を市長は聞いてくださった。よりリアルでブラッシュアップされた企画を一緒に実現させていく学生が出てきてくれるとうれしい。
外国人居住者への取り組みも問うた。留学生が半数を占める本学学生としてぜひ聞いてみたかった。公民館での日本語教室や多国語に対応したパンフレットの作成などに取り組んでいると教えていただいた。しかし、ワクチン接種券など市から届く書類は日本人であっても分かりづらいのが正直なところである。外国人にとってはなおさらである。「ややこしい手続きにはサポートが欲しい」など留学生の意見を伝え、市長から「留学生にも詳しく具体例を聞き、善処する」との言葉をいただいた。
最後に市長に生きざまを尋ねた。「私は人生で何回も失敗してきたから、失敗からの立ち直り方なら教えることができる。挑戦したいことがあるなら、例え失敗しても、3回までならやってみるといい」と、ご自身の手作り「人生グラフ」を示しながら教えてくれた。リーダーシップについては「リーダーといえるカリスマ性も器もない。だから、まずは自分が一番動く、働く。皆が自分についてくるなんてあり得ない。私の姿を見て一緒にやろうと思ってくれた人とともに一生懸命に働く」と語った。
「日経大広報編集部編集長」というポジションに悩む私にとってこれはスッと心に入ってきた言葉だった。「みんなをどうしようか」なんて考える前に、一番最初に私が動こう。考えよう。「その姿を見てもらおう」と自ら素直に納得できた。
あいさつも早々に最初から冗談を飛ばしてくれつつも胸に熱い思いを抱えた太宰府市長とタイアップしてみたいと思ったら、ぜひ編集部に連絡をしてほしい。移住地太宰府の魅力を一緒につくっていきたい。
ーProfileー
太宰府市長 楠田 大蔵(くすだ だいぞう)
1975年生。久留米大学附属中学校・高等学校卒、東京大学法学部卒。衆院議員(3期)を経て2018年1月より太宰府市長、現在2期目